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執筆者の写真鳴海 優斗

【宅建】過去問で学ぶ保証契約の話



 『保証』『連帯保証』などの言葉、皆様一度は耳にしたことがあるでしょうか。

不動産に関連する部分ですと、家を建築する際にハウスメーカーや工務店と結ぶ『建築請負契約書』や住宅ローンを借りる際に金融機関と結ぶ『金銭消費貸借契約書』、賃貸住宅を借りる際の『賃貸契約書』等がございます。

 今回は、そのような契約事の際に登場する『保証』ついて、より理解を深めたい方や今年の宅建試験を受ける方向けに、昨年の宅建試験で出題された保証の問題を可能な限り分かりやすく解説していこうと思います。



【令和2年10月試験問2】


令和2年7月1日に下記ケース①及びケース②の保証契約を締結した場合に関する次の1から4までの記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。


(ケース①) 個人Aが金融機関Bから事業資金として1,000万円を借り入れ、CがBとの間で当該債務に係る保証契約を締結した場合

(ケース②) 個人Aが建物所有者Dと居住目的の建物賃貸借契約を締結し、EがDとの間で当該賃貸借契約に基づくAの一切の債務に係る保証契約を締結した場合


肢1.ケース①の保証契約は、口頭による合意でも有効であるが、ケース②の保証契約は、書面でしなければ効力を生じない。


肢2.ケース①の保証契約は、Cが個人でも法人でも極度額を定める必要はないが、ケース②の保証契約は、Eが個人でも法人でも極度額を定めなければ効力を生じない。


肢3.ケース①及びケース②の保証契約がいずれも連帯保証契約である場合、BがCに債務の履行を請求したときはCは催告の抗弁を主張することができるが、DがEに債務の履行を請求したときはEは催告の抗弁を主張することができない。


肢4.保証人が保証契約締結の日前1箇月以内に公正証書で保証債務を履行する意思を表示していない場合、ケース①のCがAの事業に関与しない個人であるときはケース①の保証契約は効力を生じないが、ケース②の保証契約は有効である。


図で書くとこのような感じです。



ケース①の保証・・・通常の保証(『1000万円』の範囲で保証)


ケース②の保証・・・根保証(将来発生する『不特定の債務』を保証)




【肢1】ケース①の保証契約は、口頭による合意でも有効であるが、ケース②の保証契約は、書面でしなければ効力を生じない。→ ×


【肢1解説】:保証契約は『書面』及び『電磁的記録(ハードディスクやDVD等、データによる保存のこと)』で結ぶ必要があり、口頭では成立しません。民法では契約そのものは、口頭でも成立すると定められています。(民法第522条)しかし、保証は重い責任を負うことになり重要性も高いため、書面で結ばなければ効果が発生しないとされています。


【肢2】ケース①の保証契約は、Cが個人でも法人でも極度額を定める必要はないが、ケース②の保証契約は、Eが個人でも法人でも極度額を定めなければ効力を生じない。→ ×


【肢2解説】:ケース①の保証契約は、『1000万円』と保証の額が定められているため、極度額(保証の限度額)を定める必要はありません。この点は問題文も正しいです。

 ケース②の場合は、根保証契約(不特定の債務を保証する契約)のため、極度額(保証の限度額)を定める必要があります。ここを定めないと、例えば賃貸で家を借りている人の保証人は、借りている人が住んでいる間の家賃をずっと保証し続けることになり、負担が大きくなってしまいます。そのため、保証人が個人の場合は、極度額を定める必要があり、定めのない保証契約は効力を持たないとされました。しかし、法人の場合は、極度額を定める必要はありません。あくまでも個人の責任が重くなりすぎないように定められた法律ということですね。(2020年4月の120年ぶりの民法改正にてこのような変更が入りました。)


【肢3】ケース①及びケース②の保証契約がいずれも連帯保証契約である場合、BがCに債務の履行を請求したときはCは催告の抗弁を主張することができるが、DがEに債務の履行を請求したときはEは催告の抗弁を主張することができない。→ ×


【肢3解説】:この選択肢が今回の内容で一番お話したかった部分です。『催告の抗弁権』とは、債権者(お金や家を貸した本人)から請求を受けた時に、「まず先に主債務者(お金や家を借りた本人)に借金を請求してください。」と言える権利のことで、通常の『保証人』においてはこれが認められています。しかし、『連帯保証人』にはこの『催告の抗弁権』が認められていません。  

 問題には出てきていませんが、合わせてもう一つの権利『検索の抗弁権』についても説明致します。『検索の抗弁権』とは、主債務者が資産などを所有しており返済可能にも関わらず、保証人に請求された場合に履行(返済)を拒否して「まず、主債務者の財産に執行してください。」と言える権利のことです。これも『保証人』は認められていて、『連帯保証人』には認められておりません。

 上記のように連帯保証人は、非常に責任が重くほとんど主債務者と同じ義務を背負うことになり、過剰な表現をすると一心同体になります。このような決まりがあることを知っておくだけでも何かの役に立つかも知れません。


【肢4】保証人が保証契約締結の日前1箇月以内に公正証書で保証債務を履行する意思を表示していない場合、ケース①のCがAの事業に関与しない個人であるときはケース①の保証契約は効力を生じないが、ケース②の保証契約は有効である。→ 〇


 ここの内容も2020年4月の民法改正で変更になった部分です。これまで、何も分からず保証人になった人が生活の破綻に追い込まれることがあり、指摘されていました。事業用融資は特に金額が高額なこともあり、問題文のように、事業用融資の場合は『保証契約締結の日前1箇月以内に公正証書で保証債務を履行する意思を表示する必要がある』との規定が新設されました。

 自分が事業に関与してない会社の事業資金の保証人になるというのは、怖くていかにも騙されているような気がしますよね。そのように万が一騙されてしまうことを防止するための大事な規定になっています。

 ちなみにケース②は事業用の融資のケースでは無いので、この規定は適用されません。すべて問題文の通りであり、問2の正解は 肢4 となります。


 噛み砕いての解説にはなりますが、万が一分かりにくい点がある場合はご容赦下さい。


 民法は出てくる単語が難しく、その難しい単語の意味を調べたらまた難しい単語で説明されていることもあります。しかし、普段の生活にも大きく関わりがあるため、気になることがある場合は、掘り下げて調べてみるのも何か参考になるかも知れません。




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